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目からウロコ

目からウロコ

トリさんのページ3

★★ トリさんのページ ★★


カモ?なんだか分からない水鳥さん


母と末っ子の弟・タケシがイヌのお散歩に行った帰りのこと。
連れてたイヌが一方を向いて一生懸命ワンワン吠えるので、
変に思った親子がその方向に向かってイヌを連れていくと、
なんと当時できたばかりの遊歩道の小さなせせらぎに、
一羽の大きな鳥が
ばちゃばちゃ水を跳ねて歩いていました。
どうやら水浴びをしていたらしいです。
しかし急に妙なグループ(人間2匹とイヌ一匹)が
近くにやってきて不振そうに眺めるもんだから、
その鳥さんも警戒して大人しくすることにしたようです。
母がさらに近付いてよく見てみると、
その鳥さんの足の付け根、
人間でいうと太股あたりに血が付いていました。
ご機嫌で水浴びしていたものの、どうやら怪我をしている模様。

弟・タケシは、鳥さんがネコや野犬に襲われないように
そこで見張り役を命じられ、
母はイヌを家に連れ戻し、
代わりに真ん中の弟・エイジを連れてゆき、
怪我をして鳥さん捕獲作戦に乗り出しました。
...大げさな作戦の割りには
あっさりと鳥さんは捕まりました。
そしてウチに連れて来られました。

しかし、幼いワタシは思ったモノです。
こんなワケ分かんない鳥さん連れてきて、いったいどうするのだろう。
何を食べるのか、そもそもどうやって飼うのよ。
その鳥さんは、どう見ても
「お家で大人しく飼われるタイプの動物」
ではありませんでした。
きっとある決まった季節になると
どこか遠くの国へ渡って行くタイプの鳥さんです。
ニルスの大冒険です。

まず怪我をなんとかしなくてはなりません。
弟・エイジともう一人の弟・タケシが嫌がる鳥さんを押さえ付け、
帰宅した父はその血の付いた足を水で洗ってあげました。
ワタシは思いつく限りの塗り薬を探しました。
父はその中から「オロナイン軟膏」を選びました。
「これやったら何でも効くやろ」との判断です。
適当です。
母はその時でっかいタライをご近所から借りてきて、
そこに水を張って、連れてきた鳥さんの「場所」を作りました。

...そうしてその何だか分からない鳥さんとの生活が始まりました。
ワタシは食パンのみみをあげるのですが、
その鳥さんは絶対人の手からモノを食べません。
諦めてそこに置いて玄関を離れます。
そうやってそばを離れれると、パンに食らい付き、食べ始めます。
「アタシャもう腹減って死にそうだよ!!」
と言わんばかりの勢いです。
そしてワタシが「じー...」っと
その様子を眺めているのに気が付くと、
急に大人しくなるのです。
普段も人間の視線がある時はまったく見事に動かなくって、
人がいなくなると急に活動を始めます。
そのため、元気なんだかそうじゃないのか、
判断がとても難しかったのです。

しかしある時玄関を締切って、
鳥さんがひとりぼっちでどんな事をしているのかを
こっそり観察することになりました。
いつまでも野生のモノを閉じ込めておくワケにはいきません。
それに、玄関をいつまでも占領させておくワケにもいきません。
鳥さんのフンや落ちた羽は玄関を玄関でなくしてしまっていました。
すっかり野鳥園です。

そして観察の結果...
鳥さんはワタシがその場においたパンをがっつくと、毛繕いを始めます。
その合間にもフンをあちこちに振りまいておりました。
そしてペタペタとタライの回りをくるくると一周したかと思うと、
大きな翼を広げ、ピョン!と勢いよくタライの中へ飛び込みます。
もちろんタライの水はバッサ~ン!!と飛び散ります。
ど、どうしてそんなに勢いよくジャンピングダイブするの....
玄関はこうやって水浸しになってたのね...。
そしてタライの中で、楽しそうに羽を広げて羽ばたかせます。
もちろんその力強い羽ばたきで、
タライの水はさらに飛び散るのです。
毎朝掃除しても、玄関じゃなくなるハズでした。

そして何よりも両親に
「もう大丈夫だ」と確信させたことも見せてくれました。

ウチのイヌにちょっかい出して「ワン!」と怒らせるのです。

どうやるかというと、
繋がれた鎖のギリギリの所まで近付いて、
まずジッとイヌを観察します。
もちろんイヌもそれに反応して、緊張します。
しかししばらくそうしてるウチに、
イヌの方がそこに鳥さんがいることに慣れてきて、
緊張を解いてまたその場に寝そべるのです。
その時、
絶妙のタイミングで寝そべったイヌの尻尾や背中をつっ突くのでした。
イヌがびっくりして飛び起きると同時に
また繋がれた鎖のギリギリの所まで逃げるのでした。
ヤなヤツです。

そしてお別れの日。
観察の結果鳥さんもすっかり元気なようだし、
ウチのイヌも随分ストレスたまってるようだし、
近くの淀川の堤防まで連れていくことにしました。
堤防の場所によってはたくさんの水鳥が生息していて、
その中に仲間を見つけることだろう、との判断です。
自転車の前カゴに乗せて、川まで連れて行きました。
そして、同じような鳥さんがたくさんいる所に放してやりました。
あぁ、鳥さん、
あんまし懐いてくれなかったけど、やっぱり寂しいよ...
と人間側は思ってたのですが、
なんとその鳥さんは振り向きもせずに
ズンズン仲間の方へと泳いでゆきました。
ホント一度も振り向かずに行ってしまいました。
あんなにみんな苦労してお世話させていただいたのに.....。

「鶴の恩返し」なんてウソっぱちだな、と思いました。

 


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